国旗を燃やすことは、
犯罪であるべきか。
この問いには、正解がありません。国を象徴するものを傷つける行為に強い不快感を覚える人がいます。同時に、「不快だから罰する」という論理が国家権力に与えられることを、心の底から恐れる人もいます。どちらも尊重されるべき感覚です。だからこの法案は、日本社会の最も深い断層の上に置かれました。みらい議会には354件の意見が寄せられ、そしてチームみらいは——党として賛否を決めませんでした。それどころか、議員12名が誰にどう投じたかを、実名で公開したのです。
寄せられた国民意見
チームみらいの賛成
チームみらいの反対
新設された刑罰
2026年6月16日、「国旗の損壊等の処罰に関する法律案」が成立しました。人前で、多くの人がとても不快に感じるようなやり方で日の丸を壊したり汚したりした人を罰する——という、新しい犯罪をつくる法律です。
この法案に対し、チームみらいは「自由投票」を選びました。そして特筆すべきことに、誰が賛成し、誰が反対したかを議員の実名とともに公開しました。代表の安野貴博氏は、反対に回っています。
本記事では、この法案が何を犯罪とするのか、なぜ「著しく不快」という基準が問題視されるのか、既存の法律では対応できないのか、そしてチームみらいの対応がなぜ評価に値するのかを、法律の予備知識がなくても理解できるように解説します。
この法律が犯罪とする行為の範囲/「著しく不快」という基準の何が問題か/罪刑法定主義との緊張/外国国章損壊罪との決定的な違い/既存法で対応できるという指摘/354件の意見の内訳/チームみらい議員12名の投票内訳と党の説明/なぜ実名公開が重要なのか/よくある質問
まず結論:この法案は何を決めたのか
審議のステータス
出典:みらい議会(gikai.team-mir.ai)/衆議院 議案の経過情報
この法律の3つのポイント
強い不快感を与えるやり方で人前で国旗を壊した人を罰する
現在、日本の国旗を壊すこと自体を罰する法律はありません。この法律では、多くの人がとても不快に感じたり、嫌な気持ちになったりするようなやり方で、人前で国旗を壊したり、取り除いたり、汚したりした人を罰します。刑罰は2年以下の拘禁刑、または20万円以下の罰金です。
すべての損壊が罰せられるわけではない
国旗を壊す行為のすべてが罰の対象になるのではありません。「人がとても不快に感じるようなやり方で」「人前で」行った場合だけが対象です。それにあたるかどうかは、行為の様子や周りの状況などをまとめて見て判断するとされています。
表現の自由への配慮規定が入っている
法案には、この法律を使うときは表現の自由など、憲法が守っている国民の権利を不当に侵さないように気をつける、というルールも入っています。立法者自身が、表現の自由との緊張関係を認識していたことの表れです。
提案者は、なぜ必要だと主張したのか
理由1:外国の国旗は守られるのに、日本の国旗は守られていない
提案した議員の中心的な主張はこれです。現在の刑法には、外国を侮辱する目的でその国の国章を壊した人を罰する規定(外国国章損壊罪)があります。一方で、日本の国旗を壊すこと自体を罰する規定はありません。
「外国の国旗は守られるのに、自国の国旗を守る同じような決まりがないのは釣り合いがとれていない」——これが提案者の論理です。
理由2:国旗を大切に思う気持ちを守る必要がある
提案者は、国旗を大切に思う国民の気持ちを守る必要があるとしています。これは法益(法律が守ろうとするもの)として、国民の感情を位置づける考え方です。
しかし、この「不公平」論には決定的な反論がある
ここが、この法案をめぐる議論のなかで最も技術的で、かつ最も重要な論点です。みらい議会も、この点を明示的に取り上げています。
🌍 外国国章損壊罪が守るもの
目的:外国との外交関係を守ること→ だからこそ「外国政府が申し出なければ裁判にできない」という仕組み(外国政府の請求が訴訟条件)になっています。
→ 被害者は「外国政府」であり、その国が問題視しなければ処罰されません。国家間の関係を保護する、外交上の規定なのです。
🇯🇵 この法案が守るもの
目的:国旗を大切に思う国民の気持ち→ 被害者は特定されず、「国民の感情」という抽象的なものが保護されます。
→ 外国政府の請求のような歯止めはありません。誰の申し出もなく、捜査機関の判断で立件しうる構造になります。
みらい議会は、この点についてこう指摘しています。「守りたいものが違う2つの法律を『不公平』と比べることへの疑問については、改めて考える必要がある」と。
外国国章損壊罪は外交保護の規定であり、この法案は国民感情の保護の規定です。目的も、保護法益も、歯止めの仕組みもまったく異なります。「片方にあってもう片方にないのは不公平だ」という論理は、この違いを飛ばしています。
しかも重要な非対称性があります。外国国章損壊罪には「外国政府の請求」というブレーキが組み込まれているのに対し、この法案にはそれに相当するブレーキがありません。「外国並みに揃える」どころか、外国の場合より広く適用されうる設計になっているのです。
意見が分かれる4つの論点
| 論点 | 内容 |
|---|---|
| ① 表現の自由を不当に縛らないか | 国旗は、抗議や意思表示、広告、スポーツの応援など、いろいろな場面で使われます。こうした表現にまで罰が及び、表現する人が自由にものを言いにくくなるのではないかという心配の声があります。法案は表現の自由への配慮規定を入れ、対象を「とても不快あるいは嫌な気持ちにさせるやり方」での行為に絞っていますが、これで心配がなくなるかは意見が分かれています。 |
| ② どんな行為が罰せられるのか分かりにくくないか | 「人がとても不快に感じたり、嫌な気持ちになったりするようなやり方」という条件について、どんなやり方をしたら罰せられるのかをみんなが前もって予測できるのか、という点で議論があります。これは刑法の基本原則である罪刑法定主義に直結する問題です。 |
| ③ 国旗への気持ちを罰で守るのが適切か | 罰で強制すべきではないという意見がある一方、人がとても不快に感じるやり方で国旗を壊す行為まで何の制約もなくてよいのか、という意見もあります。国家への敬意を刑罰で担保することの是非という、価値観の根幹に触れる論点です。 |
| ④ 外国国章損壊罪との比較は妥当か | 外国国章損壊罪は外交関係を守るための規定で、外国政府の請求がなければ裁判にできません。一方この法案が守るのは国民の気持ちです。守りたいものが違う2つを「不公平」と比べることへの疑問が呈されています。 |
「どんな行為が犯罪となり、どんな刑罰が科されるのか」は、あらかじめ法律で明確に定められていなければならない、という近代刑法の根本原則です。憲法第31条がその根拠とされます。
この原則が求めるものの一つが「明確性」です。市民が「これをやったら犯罪になる」と事前に予測できなければ、人は萎縮して自由に行動できなくなります。また基準が曖昧だと、捜査機関や裁判所の裁量が広がりすぎ、恣意的な運用を招く危険があります。
「著しく不快又は嫌悪の情を催させるような方法」という要件が罪刑法定主義に適合するか——これが、この法案に対する法律家からの最大の批判点です。
354件の意見が語ったこと
みらい議会には、この法案について119人へのAIインタビューから50件のトピックが抽出され、354件の意見が寄せられました。そして主要トピックの内訳は、驚くほど一方向に振れています。
トピック①「著しく不快という基準は曖昧で運用が恣意的になる」(55件)
「刑罰の多くは実際の行動を罪に問うものが多い(例:殺人や窃盗など)し、それらは実際の被害を定量的に確認できたり、公平な基準を設定することが可能だ。しかし、今回の法律は人によって基準の異なる『不快』などの定性的な感覚、しかもそれを抱くかどうかっていうのは個人の政治信条依存がつよく、結果的に特定の政治信条への不当な弾圧につながらないか懸念している。」
— 法律論的な関心者「明確な意義がない以上、条文も曖昧になっています。著しく不快又は嫌悪の情というのは、あまりにも曖昧でそもそも憲法の罪刑法定主義に合うものであるとも思えません。」
— 法律専門家「通常人とは誰ですか?定義が明確ではありません。通常人のうち、何人が著しく不快だと感じれば罪になるのか。実に曖昧です。法律の文言にいわゆる『遊び』の部分や解釈の幅があってはならないと考えます。」
— 市民トピック②「既存法で対応可能であり新たな法律は不要である」(35件)
「他人の国旗を壊すなら器物損壊罪で対応できます。式典を妨害するなら業務妨害や施設管理権侵害で対応できます。道路上で危険な燃焼行為をすれば消防・軽犯罪・道路交通関係の規制で対応できます。」
— 刑事政策研究者「国旗破損罪が制定されなくとも、他人の国旗を破損・そのために他人の領域に侵入した場合は、現行法上の不法侵入、器物破損罪等で罰することができます。問題は、自分の所有する国旗を破損したらどうなるのかという点についてですが、自分の所有しているものを壊したところで罰することはおかしいと思うのです。」
— 法律に関心ある市民「『国旗のようなもの』を損壊して『器物損壊罪で相対的に重たい量刑』を求刑された場合に、『損壊したのは国旗のようなものなので、軽い量刑である器物損壊罪を適用すべきだ!』という被告人の主張すら成り立ちます。」
— 法律知識者・他人の国旗を壊した → 器物損壊罪で対応可能
・式典を妨害した → 威力業務妨害罪等で対応可能
・路上で危険な燃焼をした → 消防・軽犯罪法・道路交通法で対応可能
残るのは「自分が所有する国旗を、自分で壊した場合」だけです。そして、自分の所有物を自分で壊す行為を処罰することは、財産権の観点からも表現の自由の観点からも、通常の刑法の発想からは外れます。
つまりこの法律が実質的に新たに犯罪化するのは、「自分の旗を、自分で、公然と壊す」という純粋に象徴的・表現的な行為——まさに表現の自由が最も強く保護すべき領域だ、という構造が浮かび上がります。
チームみらいはなぜ「自由投票」にしたのか
チームみらいは、この法案について党議拘束をかけませんでした。そして——ここが決定的なのですが——議員一人ひとりが賛成したか反対したかを、実名で公開しました。日本の政党で、ここまでする例はほとんどありません。
① マニフェストの範囲外
党が有権者に約束した政策領域に直接位置づけられる法案ではありません。約束していない領域で党が答えを統一するのは、有権者への説明がつきません。
② 複数の価値判断を含む
表現の自由、国民感情、罪刑法定主義。どれも重い価値であり、党の基本方針から一義的に賛否を導くことはできないと判断されました。
③ 判断を隠さない
自由投票にしたうえで、誰がどう投じたかを実名公開。「党が決めたから」という盾を、議員が自ら手放したことになります。
チームみらいが公表した説明文
💬 みらい議会に掲載されたコメント・理由(原文)
「チームみらいは本法案について、党議拘束のない自由投票としました。各議員が自らの判断で賛否を定めており、その立場は以下のとおりです。」
「本法案は、チームみらいのマニフェストで示した政策領域に直接位置づけられるものではなく、また、複数の価値判断を含む法案であり、党の基本方針から一義的に賛否を導くことは難しいと判断しました。」
12名の議員は、どう投じたか
✓ 賛成
✗ 反対
出典:みらい議会「チームみらいの賛否」欄に掲載された議員名簿をそのまま転記。
なぜ、この「実名公開」が画期的なのか
日本の国会では、ほとんどの法案に党議拘束がかかります。議員は党の方針どおりに投票し、個人の判断は表に出ません。有権者が知ることができるのは「○○党は賛成した」という党単位の情報だけです。
その結果、何が起きるか。議員個人が政治的責任を負わなくなるのです。「私は本当は反対だったが、党の方針だったので」という説明が、いつでも使えてしまいます。
❌ 一般的な政党の場合
党議拘束をかけ、党としての賛否だけを公表する。→ 議員個人がどう考えていたかは永久にわからない。
→ 有権者は「党」しか評価できず、次の選挙で個々の議員を選び直す材料がない。
→ 議員は「党が決めたこと」を盾にできる。
✅ チームみらいの場合
自由投票にしたうえで、12名全員の賛否を実名で公開。→ 有権者は議員一人ひとりの判断を検証できる。
→ 「党が決めたから」という言い訳が構造的に使えない。
→ 党内で意見が割れていることを、隠さずに見せている。
政党にとって、内部の意見対立を公開することはリスクです。「まとまりがない」「路線が不明確だ」と批判される材料になるからです。だからほとんどの政党は、党内の議論を非公開にし、外向きには一枚岩を装います。
チームみらいは逆をやりました。代表の安野貴博氏が反対に回り、3名の議員が賛成に回った——この分裂をそのまま公表しています。これは弱さの露呈ではなく、「価値観が割れるテーマでは、党内が割れるのが自然だ」という立場の表明です。
国民が354件の意見のなかで割れているテーマについて、12人の議員だけが完全に一致しているとしたら、そのほうがよほど不自然でしょう。
「マニフェストの範囲外だから」という説明の意味
チームみらいの説明で注目すべきは、「マニフェストで示した政策領域に直接位置づけられるものではない」という一文です。
これは、政党と有権者の関係についての、ある明確な考え方を示しています。すなわち「有権者から委任されたのは、マニフェストで約束した範囲の判断である」という考え方です。
選挙でチームみらいに投票した人は、AI活用や行政のデジタル化、教育改革といった政策に期待して票を投じました。国旗をめぐる刑事立法について、党に判断を委ねたわけではありません。約束していない領域で党が答えを統一することは、委任の範囲を超える——この抑制的な姿勢は、政党のあり方として一貫しています。
この法律で、誰の何が変わるのか
国旗を使って表現や意思表示をする人
人がとても不快に感じるようなやり方で人前で国旗を壊す行為が、新たに罰の対象になります。抗議行動、風刺的なパフォーマンス、芸術表現などで国旗を扱う人は、その方法が「著しく不快」と評価されないかを事前に判断できないまま行動することになります。これがいわゆる萎縮効果です。
警察や裁判に関わる人
「人がとても不快に感じるやり方か」を、状況をまとめて見て判断することになります。数値でも列挙でもない、価値評価を含む判断を現場が担う構造です。だからこそ、運用の恣意性への懸念が繰り返し指摘されています。
有権者
チームみらいの議員については、誰がどう判断したかを知ったうえで、次の選挙で評価できます。これは他の多くの政党では得られない情報です。政党単位ではなく議員単位で政治を評価する——その材料が、この法案では提供されました。
よくある質問
まとめ:割れているものを、割れたまま見せる
国旗を大切に思う気持ちは、多くの日本人が共有する自然な感情です。それを踏みにじる行為に憤りを覚えるのは、まったく正当なことです。この法案を支持した人々の思いを、軽んじるべきではありません。
同時に、「不快だから罰する」という論理を刑法に持ち込むことの危うさも、真剣に受け止められるべきです。何が不快かは人によって違い、しかもそれは政治的信条に強く依存します。基準が曖昧なまま国家に処罰権を与えれば、結局は時の政権に都合の悪い表現が選択的に取り締まられる——法律家たちが繰り返し警告してきたのは、この構造です。
みらい議会に寄せられた354件の意見は、この緊張関係を生々しく映し出しました。そしてチームみらいは、この割れ目を割れたまま見せるという選択をしました。党として一つの答えを出さず、12名の判断をそのまま公開する。代表が少数派になることも、そのまま記録に残す。
✅ 人前で著しく不快なやり方で日の丸を壊す行為が、2年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金の対象に
✅ すべての損壊が対象ではなく、「人前で」「著しく不快なやり方で」の場合のみ
✅ 表現の自由への配慮規定が入っているが、本体要件の曖昧さは解消されていない
✅ 外国国章損壊罪は「外交保護」の規定で外国政府の請求が必要。守るものも歯止めも異なる
✅ 他人の旗の損壊は器物損壊罪等で対応可能。新たに犯罪化されるのは実質的に象徴的表現の領域
✅ 354件の意見のうち、主要2トピック90件で懸念が87件と圧倒的多数
✅ チームみらいは自由投票。賛成3名、反対9名(代表の安野貴博氏は反対)
✅ 理由は「マニフェストの政策領域外」「複数の価値判断を含み党方針から一義的に賛否を導けない」
✅ 12名全員の賛否を実名公開——日本の政党でほとんど例のない透明性
政治において最も難しいのは、答えのない問いにどう向き合うかです。強い答えを断言することは簡単で、有権者にも受けがいい。しかし「これは党が決めるべきことではない」と言い、そのうえで一人ひとりの判断を隠さず晒すことのほうが、はるかに勇気を要します。
賛成した3名にも、反対した9名にも、それぞれの理由があったはずです。その全員の名前が記録に残り、有権者の検証に開かれている。これこそが、政治に対する信頼を回復するための、最も地道で確実な方法なのだと思います。
参考・出典
- みらい議会「国旗の損壊等の処罰に関する法律案」
https://gikai.team-mir.ai/bills/28021d81-3deb-48d7-9ecf-b86828e97e50 - 衆議院「議案の経過情報」「議案本文」「議案要綱」(第221回国会衆法第18号)
- e-Gov法令検索「国旗及び国歌に関する法律」
- e-Gov法令検索「刑法」(外国国章損壊罪)
※本記事はチームみらいの非公式応援サイトによる解説です。法案の正確な内容は必ず一次資料をご確認ください。議員の賛否・党の説明文・意見の内訳は、みらい議会の掲載情報をそのまま転記しています。AIインタビューの回答者は無作為抽出ではなく、意見の内訳を国民全体の世論として読むことはできません。