建てる前に、
もう排出は始まっている。
省エネ住宅、といえば断熱性能や高効率エアコンを思い浮かべるでしょう。実際、これまでの制度が対象にしてきたのは「建物を使っているときのCO2」——冷暖房や照明が出す分だけでした。しかし、建物のCO2はそこから始まるわけではありません。セメントを焼き、鉄を精錬し、資材を運び、建設し、やがて解体して処分する。その全過程でCO2は出ています。日本のCO2の約4割が建物に関係している——それでも、測っていたのは一部分だけでした。
建物に関係する日本のCO2
改正のポイント数
段階的な施行
2026.3.27提出
2026年3月27日に提出された「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律の一部を改正する法律案」は、現在も国会で審議中です。通称建築物省エネ法の改正。
チームみらいはこの法案に「賛成」の立場を表明しています。
この改正の核心は、CO2を測る「範囲」を広げることです。使っている間だけでなく、材料づくりから解体まで。測る範囲が変われば、何が「良い建物」なのかの定義も変わります。
建物のCO2はどこで出ているのか/「使用時」だけを測ることの問題/ライフサイクル全体を評価する新制度/ZEH・ZEBとは/大手住宅メーカーへの届出義務/CO2排出量の認証マーク/欧州との競争/意見が分かれる5つの論点/チームみらいが賛成した理由/よくある質問
まず結論:この法案は何を決めようとしているのか
審議のステータス
出典:みらい議会(gikai.team-mir.ai)/国土交通省 法律案の概要。本記事執筆時点で審議中です。
日本のCO2の4割が、建物に関係している
建物のCO2は、大きく2種類に分けられます。
① 運用時のCO2(オペレーショナルカーボン)
冷暖房、照明、給湯、換気——建物を使っている間に消費するエネルギーから出るCO2です。これまでの省エネ規制が対象にしてきた部分です。
② 建設・解体時のCO2(エンボディドカーボン)
材料をつくる段階から解体するまでに出るCO2です。セメントの製造、鉄の精錬、資材の輸送、建設工事、そして最後の解体と廃棄物処理。
とくにセメント(コンクリート)と鉄鋼は、製造時に大量のCO2を出す代表格です。セメントは製造プロセスそのものから化学的にCO2が発生し、鉄鋼は高温を得るために大量の燃料を使います。
測る範囲が、こう変わる
製造
(冷暖房等)
再資源化
これまでは「使っているとき」だけが対策の対象でした。
今回の改正で、材料をつくる段階から解体するまでのCO2を国の統一ルールで評価します。
断熱性能を極限まで高めた住宅を考えてみてください。使用時のCO2はほぼゼロになります。素晴らしい省エネ住宅です。
しかし——その断熱材を作るのに大量のエネルギーを使い、輸入で長距離を運び、厚いコンクリート基礎を打ち、そして30年後に解体して埋め立てるとしたら?
使用時のCO2は減っても、生涯全体では増えているかもしれません。
そして重要なのは、建物の省エネ性能が上がるほど、使用時のCO2は小さくなるということです。つまり相対的に、建設時のCO2の比重が大きくなります。省エネが進むほど、測る範囲を広げないと実態を捉えられなくなるのです。
改正の5つのポイント
材料づくりから解体までのCO2を国のルールで評価する
これまでは冷暖房や照明など使用時のCO2だけが対象でした。今後は材料をつくる段階から解体するまでのCO2を、国が定めるルールで評価します。国が統一の計算ルールを決め、大きな建物を新築するときは評価結果を国に届け出ます。
エネルギー使用を減らす工夫をした建物を国が認める制度
自然の風で室温を調節するなど、エネルギーの使用を減らす工夫をした建物を国が認めます。太陽光発電などでエネルギーをつくり、使用量をほぼゼロにする住宅(ZEH)やビル(ZEB)が目標です。
大手住宅メーカーにCO2削減計画の届出を義務づけ
住宅の販売量が多い大手メーカーに、CO2を減らす計画をつくり毎年の進み具合を国に届け出るルールをつくります。
CO2排出量を外部機関が確認してマークを表示できる制度
建物のCO2排出量を国が認めた機関が確認し、合格した建物に専用マークを表示できます。買い手が比較できるようになります。
成立してから1〜2年で段階的に施行
内容によって、法律の成立から1年以内に始まるものと、2年以内に始まるものがあります。事業者の準備期間を考慮した設計です。
POINT 1「国が統一の計算ルールを決める」ことの意味
❌ 統一ルールがなければ
各社が独自の方法でCO2を計算→ 数字を比較できない
→ 自社に有利な計算方法を選べる
→ 「当社の建物は低炭素です」という主張の検証ができない
→ グリーンウォッシュの温床に
✅ 国が統一ルールを定める
全員が同じ計算方法を使う→ 建物どうしを比較できる
→ 数字に意味が生まれる
→ 削減努力が評価される
→ 買い手が判断材料を持てる
脱炭素政策の基本原則は、「測定なくして削減なし」です。
どれだけ「CO2を減らそう」と呼びかけても、何がどれだけ出ているかがわからなければ、努力の方向も、成果の大きさもわかりません。
そして測定には共通のものさしが要ります。各社がバラバラの方法で計算していては、比較も競争も成立しません。Aの建物とBの建物、どちらが低炭素なのか——それが判断できて初めて、市場が動きます。
国が統一の計算ルールを決めるというのは、市場が機能するための前提条件を整えることです。規制であると同時に、インフラの整備だと言えます。
POINT 4「マーク」が持つ、市場を動かす力
家電の省エネラベル、食品の栄養成分表示、住宅の耐震等級——これらに共通するのは、「専門知識のない買い手が、一目で比較できる」ようにする仕組みです。
建物のCO2排出量は、素人には計算できません。しかしマークがあれば、比べられます。
【そして売り手の行動が変わる】
買い手が比較できるようになると、売り手には「マークを取りたい」という動機が生まれます。取れなければ売りにくくなるからです。
これは規制よりも柔らかく、しかし確実に行動を変える手段です。義務づけずに、情報開示によって市場を動かす。
ただし論点⑤が指摘するとおり、取得が任意である以上、どこまで広まるかは不透明です。ラベル制度の成否は、「取らないと不利になる」水準まで普及するかにかかっています。
なぜ今、この改正が必要なのか
日本のCO2の約4割が建物から出ている
これまでは建物を使っているときのCO2だけが対策の対象でした。材料づくりや解体で出るCO2も合わせて減らす必要があります。4割という規模は、この分野を無視して脱炭素目標を達成できないことを意味します。
日本の建設業界が世界と渡り合うためにも必要
欧州では建物のCO2を計算して届け出る制度がすでにあります。日本の建設業界が世界で競争力を保つためにも、同様の仕組みを整える必要があります。
欧州ではすでに建物のCO2算定・届出の制度が動いています。これが意味するのは——欧州で建物を建てたり、欧州企業と取引したりする際に、CO2データの提出を求められるということです。
日本の建設会社や建材メーカーが、「うちには計算する仕組みがありません」と答えるしかない状態なら、その時点で取引から外されます。
これは気候関連情報の開示義務化と同じ構図です。データを出せない企業は、国際的なサプライチェーンから排除される時代になりつつあります。
ルールを作ることは、日本企業がその土俵に立てるようにすることでもあります。
意見が分かれる5つの論点
| 論点 | 内容 |
|---|---|
| ① 中小の建設会社や設計事務所の負担が増えないか | CO2の計算には専門のデータや知識が必要です。中小の事業者には新たな作業や費用の負担になるという指摘があります。 |
| ② 計算する人によって結果にばらつきが出ないか | 材料ごとのCO2データや建物の寿命の決め方にはあいまいな部分があり、結果に差が出やすいという指摘があります。 |
| ③ 家を買う人の費用負担が増えないか | CO2が少ない材料や設備は従来より高くなる場合があります。その分が住宅の価格に上乗せされる可能性が指摘されています。 |
| ④ 届け出のルールがどこまで広がるのか | 届け出が必要な建物は最初は大きなビルだけですが、将来どこまで対象が広がるかについて業界から見通しを求める声があります。 |
| ⑤ 認証マークの制度は広まるのか | 認証マークの取得は任意のため、どの程度の建物に広まるかは不透明です。取得を後押しする仕組みづくりが重要になります。 |
論点②:「計算する人によって結果が変わる」という致命的な問題
5つのなかで、制度の根幹に関わるのがこれです。
⚠️ ばらつきが生じる要因
材料ごとのCO2データ→ 同じ「鉄」でも、製法や産地でCO2排出量は大きく異なる
→ どのデータを使うかで結果が変わる
建物の寿命の決め方
→ 生涯のCO2を計算するには「何年使うか」の前提が必要
→ 30年と設定するか、60年と設定するかで年あたりの数字は2倍違う
❓ 何が起きるか
計算の前提を自社に有利に設定できる→ 「うちの建物は長寿命だから、年あたりのCO2は少ない」
→ 「この材料のCO2データは、有利な数値を採用」
→ 数字が比較できなくなり、制度の意味が失われる
この論点は、法案の柱1が「国が統一の計算ルールを決めます」としている理由そのものです。
計算方法が事業者任せなら、数字は操作可能になります。使う材料データの出典、建物寿命の標準値、算定の境界(どこからどこまでを含めるか)——これらをすべて国が定めなければ、比較可能性は生まれません。
そして柱4の「外部機関による確認」も、この問題への対応です。自己申告だけでは検証されません。第三者が計算の妥当性をチェックすることで、初めて数字に信頼が生まれます。
この法案の成否は、条文ではなく「国が定める計算ルールの精度」で決まります。そこが甘ければ、制度全体が形骸化します。
論点①③:コストは誰が負担するのか
① 中小事業者の負担——CO2の計算には専門知識とデータが必要です。大手なら専門部署を置けますが、小さな設計事務所には難しい。外部に委託すれば費用がかかります。
③ 買い手の負担——低炭素な材料や設備は、従来品より高い場合があります。そのコストは住宅価格に転嫁されます。
つまり「脱炭素のコストを、最終的に家を買う人が払う」という構図です。
住宅価格はすでに高騰しています。そこにさらに上乗せされれば、住宅取得はさらに遠のきます。脱炭素と住宅の取得可能性——この2つのトレードオフは、正面から扱われるべき論点です。
① 計算ツールの無償提供・自動化——中小事業者の負担の大半は「計算作業」です。国が標準的な計算ツールを無償で提供し、BIM等の設計データから自動算出できるようにすれば、負担は大きく減ります。ここはデジタル政策の出番です。
② 低炭素材料の量産によるコスト低下——需要が生まれれば、供給側の投資が進み、価格は下がります。制度がつくる需要が、コスト低減の起点になります。
③ 長寿命化による総コストの低減——生涯CO2で評価するということは、長く使える建物が有利になるということです。長寿命の建物は、住み手にとっても総コストが低い。評価の視点が変わることで、価値の基準そのものが変わります。
チームみらいはなぜ「賛成」を選んだのか
チームみらいは、この建築物省エネ法改正案に賛成の立場を表明しています。日本のCO2の約4割を占める分野で、これまで「使っている間」しか測ってこなかったという測定範囲の欠落を埋めること。そして統一の計算ルールを国が定めることで、比較可能な市場を作ること——いずれもデータに基づく政策の基本です。
① 測れないものは減らせない
CO2の4割を占める分野で、測定範囲が一部に限られていたのは制度の欠陥です。まず正しく測る仕組みを作ることが出発点です。
② 共通のものさしが市場を作る
各社バラバラの計算では比較できません。国が統一ルールを定めることは、規制であると同時にインフラ整備です。
③ 国際競争の土俵に立つ
欧州にはすでに同様の制度があります。データを出せない企業は取引から外される時代に、日本企業が戦えるようにする産業政策でもあります。
「省エネ」から「ライフサイクル」への転換
この改正が示しているのは、環境政策の考え方そのものの変化です。
🏠 これまでの発想
「使うときのエネルギーを減らす」→ 断熱性能を上げる
→ 高効率な設備を入れる
→ 太陽光を載せる
→ 建物そのものが持つCO2は、視野の外
🔄 これからの発想
「生涯全体のCO2を減らす」→ 低炭素な材料を選ぶ
→ 輸送距離を短くする
→ 長く使える建物にする
→ 解体後に再資源化しやすくする
→ 建てる前から壊した後までが評価対象
この転換で最も大きな変化は、建物の寿命が評価に組み込まれることかもしれません。
使用時のCO2だけを見ていた時代には、「何年使うか」は問題になりませんでした。年間の消費エネルギーが少なければ、それで良かった。
しかし生涯CO2で評価すれば、建設時に出したCO2を、何年で割るかが効いてきます。30年で壊す建物と、60年使える建物では、同じ建設時CO2でも年あたりの負荷が半分違います。
日本の住宅は、諸外国と比べて寿命が短いことが長年指摘されてきました。この評価の変更は、「長く使える建物を作る」ことに経済的な意味を与える可能性があります。
脱炭素政策が、住宅の質の向上につながる——この副次的な効果は、実は本命かもしれません。
審議中だからこそ、言うべきこと
この法案はまだ成立していません。だから、内容に影響を与えられる段階です。
計算ツールを国が無償提供する
中小事業者の負担の本質は「計算作業」です。標準ツールの無償提供と、設計データからの自動算出。ここをデジタルで解決できるかが分岐点です。
計算ルールの精度と透明性
材料データの出典、建物寿命の標準値、算定の境界。これらが曖昧なら制度全体が形骸化します。ルールの策定過程を公開すべきです。
対象拡大の見通しを示す
業界が求めているのは「いつ、どこまで広がるのか」の予見可能性です。準備には時間がかかります。ロードマップの提示が必要です。
マーク取得への後押し
任意の認証制度は、取得の動機がなければ広まりません。住宅ローンの優遇、税制、公共調達での加点——需要側からの誘導が要ります。
この改正で、誰の何が変わるのか
建物を建てる事業者や建築士
CO2の計算や届出、建てる人への説明が必要になります。設計業務に新たな工程が加わります。計算ツールの整備がなければ、実務負担は相当なものになります。
大手住宅メーカー
CO2を減らす計画をつくり毎年届け出が必要です。単発の報告ではなく、継続的な削減計画とその進捗管理が求められます。経営計画に組み込む必要があります。
建築材料をつくるメーカー
材料ごとのCO2排出量のデータ整備が必要になります。データを出せなければ、その材料は選ばれなくなります。逆に、低炭素材料を作れる企業には商機です。
中小の建設会社
届け出は当面不要ですが、発注元からデータを求められる可能性があります。直接の義務がなくても、サプライチェーンを通じて実質的な対応を迫られます。
家を買う人や建物を使う人
認証マークで建物のCO2排出量を比べやすくなります。一方で住宅価格が上がる可能性もあります。選択の材料が増える一方、コスト負担の懸念が残ります。
地方自治体
届出の確認や審査の体制づくりが必要になります。建築確認の窓口に、新たな専門性が求められることになります。
よくある質問
今回の改正では、材料をつくる段階から解体するまでに出るCO2も評価対象になります。セメントの製造、鉄の精錬、資材の輸送、建設工事、解体と処分——建物の生涯全体です。
使用時のCO2は減っても、生涯全体では増えているかもしれません。
さらに重要なのは、建物の省エネ性能が上がるほど使用時のCO2は小さくなり、相対的に建設時のCO2の比重が大きくなることです。省エネが進むほど、測る範囲を広げないと実態を捉えられなくなります。
この改正では、自然の風で室温を調節するなど、エネルギーの使用を減らす工夫をした建物を国が認める制度がつくられ、ZEH・ZEBが目標として位置づけられます。
各社が独自の方法で計算すれば、自社に有利な前提を選べます。「当社の建物は低炭素です」という主張の検証ができず、グリーンウォッシュの温床になります。
とくに問題なのは、材料ごとのCO2データと建物の寿命の設定です。寿命を30年とするか60年とするかで、年あたりの数字は2倍違います。この法案の成否は、国が定める計算ルールの精度で決まります。
緩和する方向は3つあります。①計算ツールの無償提供による事業者負担の軽減、②需要が生まれることによる低炭素材料の量産とコスト低下、③長寿命化による総コストの低減です。
とくに③は重要です。生涯CO2で評価すると長く使える建物が有利になり、それは住み手にとっても総コストが低いことを意味します。
論点として「CO2の計算には専門のデータや知識が必要です。中小の事業者には新たな作業や費用の負担になる」と指摘されています。
本質的な解決策は、国が標準的な計算ツールを無償提供し、設計データから自動算出できるようにすることでしょう。計算作業そのものを人がやらなくて済むなら、負担の大半は消えます。
ラベル制度は、買い手が比較できるようになれば、売り手に「取りたい」動機が生まれるという仕組みで機能します。規制より柔らかく、しかし確実に行動を変える手段です。
ただし、任意である以上、「取らないと不利になる」水準まで普及するかが鍵です。住宅ローンの優遇、税制、公共調達での加点など、需要側からの誘導が必要になるでしょう。
成立した場合、内容によって法律の成立から1年以内に始まるものと、2年以内に始まるものがあります。事業者の準備期間を考慮した段階的な施行です。
審議中ということは、いま意見を述べれば内容に影響を与えられる可能性があるということでもあります。とくに計算ルールの精度、中小事業者への支援、対象拡大の見通しについては、審議で詰められるべき論点です。
まとめ:測る範囲を変えると、良い建物の定義が変わる
「省エネ住宅」という言葉から、私たちは断熱と高効率設備を思い浮かべます。それは正しいのですが、物語の一部にすぎませんでした。
建物のCO2は、住み始める前から出ています。セメントを焼き、鉄を精錬し、資材を運び、建て、そして壊す。その全過程で排出は続いています。
そして日本のCO2の約4割が、建物に関係しています。それなのに、測ってきたのは「使っている間」だけでした。
✅ 材料づくりから解体までのCO2を、国の統一ルールで評価する仕組みを新設
✅ 大きな建物の新築時は、評価結果を国に届け出る
✅ 自然の風の活用などエネルギー使用を減らす工夫をした建物を国が認定。ZEH・ZEBが目標
✅ 大手住宅メーカーにCO2削減計画の作成と毎年の進捗届出を義務化
✅ 外部機関がCO2排出量を確認し、合格した建物に認証マークを表示できる制度
✅ 成立から1年以内・2年以内に段階的に施行
✅ 背景に日本のCO2の約4割が建物関連という事実
✅ 欧州にはすでに同様の制度があり、日本の建設業界の国際競争力にも関わる
✅ 論点は「中小事業者の負担」「計算結果のばらつき」「住宅価格への転嫁」「対象拡大の見通し」「マークの普及」
✅ 本法案は執筆時点で国会審議中
✅ チームみらいは賛成。「測れないものは減らせない」「共通のものさしが市場を作る」「国際競争の土俵に立つ」という3つの論理に基づく
この改正が本当に効くかどうかは、国が定める計算ルールの精度にかかっています。材料データの出典が曖昧なら、建物寿命の設定が事業者任せなら、数字は簡単に操作されます。ルールが甘ければ、制度全体が形だけのものになります。
そしてもうひとつ。中小事業者が計算できるかどうかです。専門知識とデータが必要な作業を、小さな設計事務所に押しつけるだけでは、制度は回りません。計算ツールを国が無償で用意し、設計データから自動算出できるようにする——ここまでやって初めて、この法案は現場に届きます。
ただ、この改正には思いがけない副産物があるかもしれません。生涯CO2で評価するということは、「長く使える建物」が有利になるということです。日本の住宅の短命さは、長年の課題でした。
脱炭素という切り口から、住宅の質そのものが問い直される。もしそうなれば、それはCO2削減以上の意味を持つでしょう。
参考・出典
- みらい議会「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律の一部を改正する法律案」
https://gikai.team-mir.ai/bills/cb8c4124-236e-44dd-a010-f7db08ab5df3 - 国土交通省「『建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律の一部を改正する法律案』を閣議決定」
- 国土交通省「法律案の概要」
- 国土交通省「建築物省エネ法 最新の法令」
※本記事はチームみらいの非公式応援サイトによる解説です。法案の正確な内容は必ず一次資料をご確認ください。数値はみらい議会の掲載情報に基づいています。本法案は執筆時点で国会審議中であり、内容が変更される可能性があります。ライフサイクルCO2に関する説明は、一般に知られている知見を平易に整理したものです。なお、みらい議会側の当該ページは有識者レビュー中であり、今後内容が更新される可能性があります。